弐段受験課題
有段者の心得
仙川道場 小林 航
合気道は他の武道やスポーツと違い、他者と競い優劣を決める試合というものがあまりありません。日々の稽古も共に技を掛け合い、互いに技術の向上を目指します。
つまり、競技としての面より自己の鍛錬の面が強いのではないでしょうか。段位を意識するということは自らを鍛える上で明確な目標となるのだと思います。
しかし、段位の取得には更に異なった意味があるのではないかと思います。
先ほど述べたように、合気道は自己鍛錬の面が強い武道です。
極端に言えば段位や級を取得しなくても技術は身に着けることができます。
では、段位を目指す、また取得する意味とはなんでしょうか。
私は、その一つに「他人から見た明確な基準」というものがあるのではないかと思います。
例えば、共に優れた技術と人格を持つ2人がいたとします。そしてそのうちの1人は有段者とします。
時間をかけ共に稽古できれば両者が素晴らしい人物だと理解できますが、初心者の方やこれから合気道を始めようとする方達はどう思うでしょうか。
やはり第一印象に有段者か否かというのは関わってくるのではと思います。
ここで私が言いたいのは、段位を得れば第一印象が良くなるというのではなく、段位を得れば人からは有段者として見られるということです。
つまり段位を得るにはそれに相応しい技術や立ち振る舞い、そしてなにより心が必要なのではないでしょうか。
有段者に相応しい心とはなんなのか、それを考えるのはとても難しいことです。
それを考えるうち、私は今まで自分が合気道を続けてきて、痛い技を掛けられたからといってその相手を嫌ったり憎んだりしたことはなかった事に思い至りました。
それはなぜだったのか、それは相手の事を信頼できていたからだと思います。
有段者ともなれば、共に稽古をする中で色々と聞かれることもあると思います。
それに応えられるのは勿論のこと、相手に信頼してもらい、この人と稽古するのは楽しい、共に稽古をして切磋琢磨したい、そう思ってもらえる心を持った人間を目指したいと思っています。