初段論文「有段者の心得」 秋本幸成
「武術」が「武道」へと昇華したように、合気道にも「道」の文字が冠せられ精神性、道徳性に重きが置かれている。「道」とは、技術の修得に留まらず人としての成長を目指すことを意味しており、日々の稽古の中で培われていくものだと考えている。私自身、技や型の「模倣」から始まり、少しづつ理解を深め意味や本質を考えていく中で、常に礼節や感謝の気持ちを持ち続けるよう努めてきた。このたび、有段者の一端に名を連ねさせていただくにあたり、その思いを新たにし、心身を一層引き締めて稽古に励んでいきたいと思う。「道」とはまた、己と向き合い続ける過程そのものであると感じている。日々の稽古がいつか実を結ぶことを信じて愚直に努力を続ける先に初めて技や型の修得はあり、そのような自己との向き合いの中で、精神性や道徳性は鍛錬されていくものだと強く感じている。ある高名な武道家の言葉に「1万通りの技を一度ずつ稽古した者より、たった一つの技を1万回稽古した者を自分は畏れる」とあった。決して精神論に偏るものではないが、まさにこのような修練の積み重ねの中に「気・心・体の統一」があり、有段者への昇段とはそのような研鑽の過程での一つの区切りとなるものだと思う。同時にここからがスタートであるということを強く肝に銘じたい。「合気道が人間を形成するのではなく、合気道にどう取り組むかが人間形成の道になる」ということを稽古の要諦と心得、後進の方々の模範となれるよう、また「礼に始まり、礼に終わる」人間形成を高めていけるよう、先生や先輩方のご指導を仰ぎ、今後とも一層精進していきたい。